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代ゼミ

 大手予備校「代々木ゼミナール」(東京都)が、校舎の閉鎖と大幅な人員削減に踏み切る。来月1日からは、早期退職の募集も始まる。「3大予備校」と呼ばれた一角が、なぜ生徒集めに失敗したのか。少子化の流れに加え、入試改革が進む中、予備校は「変革」を迫られている。

 「断腸の思いですが、学園存続のためには大幅な校舎運営費と人件費の圧縮を行わなければなりません」

 代ゼミの職員に対し、高宮英郎理事長名の文書が配られたのは8月後半。仙台校や浜松校、神戸校、小倉校などを閉鎖して、全国で七つの校舎に集約する方針が示されていた。「若い職員を中心にした事業運営への転換」で、40歳以上の職員約400人を対象に、9月1日から行う早期希望退職の応募書類も添えてあった。突然の通告に、職員の一人は「どうしてこうなったのか全く分からない。必死に新聞を読んで情報を集めている」と戸惑った。生徒数が減り、人気講師でも教室の前の列しか席が埋まらないこともあったという。

 生徒のショックも大きい。来春の閉鎖が決まった津田沼校(千葉県)に通う男性(19)は「今年で何とか合格しなければ。有名講師が来るので代ゼミを選んだけど、先生が解雇されたら悲しい」と肩を落とす。高3の時から通う男性(18)は「講師の先生の教え方が分かりやすくて親しみがあったのに……。僕らがここの最後の生徒になるとは」と話した。あと半年で合否が決まる時期に発表することに対しても批判の声は少なくない。

 センター試験の自己採点結果を高校を通じて集め、無料で分析する「センターリサーチ」も廃止されるが、札幌市の公立高校の男性教諭(55)は「代ゼミの判定は精度が高かったので残念」と話す。

■崩れた「浪人大量獲得モデル」

 駿台予備学校河合塾と並び「3大予備校」と言われ、かつては学生数8万人を擁した代ゼミ。しかしライバル大手幹部は「代ゼミは10年以上前から低迷し、実質的には『2強』だった」と驚く様子もない。

 大手校のメーンターゲットは浪人生だが、代ゼミは中堅私立大志望者の大量獲得に強みを発揮した。1957年の設立以来、大学進学率の上昇とともに学費収入を大幅に増やし急成長。高給で採用した名物講師も話題となり、チャイナドレスやキャラクターのコスプレ姿の講師も登場。90年代には「400人収容の大教室に立ち見が出た」(ベテラン職員)という。

 しかし、91年度に全国で29万人いた浪人生は、今年度は約8万5千人にまで減少している。えり好みしなければ誰でも大学に入れる全入時代に突入しているからだ。

 私立大は入試の回数や、AO入試や推薦入試の枠を増やすなどして、大学受験は以前より「広き門」に。特に地方では「浪人してでも」中堅私立大を目指す学生が減り、講師の魅力で生徒を集めてきた代ゼミの「強み」が弱みに変わった。職員によると、現在の学生数は、ピークの1割以下の数千人程度だという。

 一方で、駿台河合塾は浪人してでも合格を目指す難関大志望者をメーンターゲットに据えた。河合塾の場合、浪人生の生徒数は約2万5千人で、00年とほぼ同じ水準だという。両校とも「浪人生が減っても、上位校を目指す層は確実にいる」と、今後も浪人生市場を手放す考えはない。

 「閉鎖的な体質だから、受験生の動向を予測した転換ができなかった」。代ゼミ職員は、理事長ら幹部の運営手法も問題視する。代ゼミを運営する学校法人「高宮学園」は創設者の高宮行男氏以来、一族が経営を担ってきた。財務情報は労使交渉でも開示されない一方で、職員の給料は減り続けているといい、「経営状況について説明もなく、給料は一方的に下げる。嫌気がさして退職する中堅職員もいる」と、ある職員は明かす。

 こうした指摘に対し、代ゼミ広報企画部は「職員の意見を吸い上げ、(学校運営を)改革している」と反論する。

■大学入試も変化、予備校の将来は

 代ゼミの新たな「事業展開」と業界内でささやかれているのが「不動産事業」の強化だ。

 閉鎖を決めた校舎の多くは、地方都市の駅前の一等地にあり、大半が自前の土地だ。京都の旧校舎はホテルになり、名古屋の旧校舎跡地には23階建てのテナントビルを建設し、ビジネスホテルが入る予定だ。ただ、広報企画部は「不動産を含めた多角経営は考えていない」としている。

 大学受験で問われる「学力」も変わる中、予備校は生き残れるのか。大学入試センター試験に代わる「達成度テスト」が早ければ21年度から始まるなど、大学入試が「知識量」よりも、「考える力」を重視する内容に変わりつつある。

 河合塾の堀内晃・企画広報部長は「大手の強みと、個別指導などの支援システムを両立してきた」。大手予備校の東進ハイスクールなどを展開する「ナガセ」の永瀬昭幸社長は「人物本位の新しい入試にどう対応するか。予備校も変わらなければいけない時期に来ている」と話す。(伊東和貴、河原田慎一、千葉卓朗)

Thanks, Masahiro Nouchi -Sent from my iPhone